第20回大阪アジアン映画祭 Osaka Asian Film Festival 2025

第20回大阪アジアン映画祭 授賞結果

グランプリ(最優秀作品賞)

第20回大阪アジアン映画祭 Osaka Asian Film Festival 2025

授賞理由

映画が描く(映す)テーマが多様化する中で、特に「映画祭」では選ばれにくい、最も古典的な”恋愛映画”の本作に迸る熱度と強度に衝撃をうけました。主演二人がたどる「運命」は映画を目にする私たちを疑いもなくその物語に没入させ、映画的歓びを共有させてくれるその世界に魅了されました。

来るべき才能賞

パク・イウン

PARK Ri-woong

授賞理由

パク・イウン監督の人間の善良さを見抜く能力と、社会が抱える問題を詳らかにする鋭い注意力は来るべき才能賞に値する。

受賞コメント

映画祭が閉幕し帰国する飛行機で、大阪のキラキラ輝く川面や様々な人が行き交う街、雄大な奈良の寺とそこかしこに漂うたこ焼きの匂いを思い出していました。この共感覚的な経験をふと、とても映画的だなと思いました。
おかげさまでいい人々に会い、いい場所で自分自身と自分たちを考える時間を持つことができました。
映画祭に招待してくれて、そして歓迎してくれて、映画を鑑賞してくれたすべての皆さんに心から感謝します。賞の名に恥じないよう一層努力し、さらに輝く、さらにいい映画を作ります。ありがとうございます。
パク・イウン

スペシャル・メンション

私たちの話し方
The Way We Talk

第20回大阪アジアン映画祭 Osaka Asian Film Festival 2025

授賞理由

『私たちの話し方』のアダム・ウォン監督と彼のクルーの深い優しさと、先入観のない公平な視点が本作を珠玉の作品にした。聴覚障害者の内なる世界に観客を心深く没入させる作品である。

受賞コメント

スペシャル・メンションに選ばれたことを大変光栄に思います。審査委員の皆さん、OAFFでお会いした観客の皆さん、ありがとうございました。また、この映画の制作中に出会ったろう者、難聴者の方々に心から感謝します。どの段階においても、本作に気づきを与えてくれました。
Q&A セッションでの手話通訳の手配や字幕のことなど、本作の上映のアクセシビリティに尽力してくれた大阪アジアン映画祭 スタッフとOne Cool Picturesの仲間たちに特別なエールを送ります。
この貴重なスペシャル・メンションをきっかけに『私たちの話し方』の日本公開が実現することを願っています。
監督 アダム・ウォン

最優秀俳優賞

トゥブシンバヤル・アマルトゥブシン
『サイレント・シティ・ドライバー』
主演

Tuvshinbayar AMARTUVSHIN

第20回大阪アジアン映画祭 Osaka Asian Film Festival 2025

授賞理由

アマルトゥブシンは静謐で、決して不快でない男らしさを体現し、それは映画の領域に深く共鳴した。彼の内なる感情を伝える卓越した演技力は、静穏だが暗晦な世界に生きる主人公の複雑な孤独を的確に捉えた。

受賞コメント

サイレント・シティは私たちの世界に存在する…。おそらくそれは、私たちが口にすることを恐れ、向き合うことをためらうもの。本作の制作チームは、それを驚くべき力で描き出しました。
この賞は私にとって本当に特別なものです。俳優として初めての役でしたが、演技に対する評価を越えた、深い意味のある栄誉だと思っています。映画は共同で創りあげる芸術であり、私を通して、多くの才能あふれるクルーの努力の結晶が見えてくるはずです。だからこそ、私は本作に全力を尽くしました。この賞をいただいて、私に寄せてくれた信頼を裏切ってはいなかったと再確認することができました。
素晴らしいチームのサポートと献身に深く感謝します。そしてもちろん、この素晴らしい栄誉を与えてくれた大阪アジアン映画祭に心から感謝します。
トゥブシンバヤル・アマルトゥブシン

JAIHO賞

第20回大阪アジアン映画祭 Osaka Asian Film Festival 2025

授賞理由

テンポよく展開するストーリー、主人公2人の瑞々しい演技。彼らがバスの車窓から眺める四季折々の風景が、音楽と絡み合い美しい余韻を残す。そして少年は大人になる。“ボーイ・ミーツ・ボーイ”映画の傑作。

受賞コメント

このような意味がある賞をいただけて感謝しております。この度の上映で日本の観客の皆さんとお会いできて幸せでしたし、日本でまたお会いできることを願っております。ありがとうございました。
監督 オム・ハヌル

薬師真珠賞

カオ・イーリン 高伊玲
ラン・ウェイホア 藍葦華
ツェン・ジンホア 曾敬驊
ホアン・ペイチー 黃珮琪

授賞理由

「我が家の事」の主人公家族を演じた4人の俳優たち、カオ・イーリン、ラン・ウェイホア、ツェン・ジンホア、ホアン・ペイチーに授与する。家族それぞれがかかえる複雑な心情を見事なアンサンブルで演じ、新人監督による偉大な傑作の誕生に貢献した。

JAPAN CUTS Award

第20回大阪アジアン映画祭 Osaka Asian Film Festival 2025

授賞理由

多彩な編集と撮影手法、不条理なユーモアとハートフルなストーリーテリングが矢継ぎ早に繰り広げられる、大河原恵監督の『素敵すぎて素敵すぎて素敵すぎる』にJAPAN CUTS AWARDを授与する。脚本・監督・編集・主演を務めた大河原は、真の若いエネルギーに溢れ、短い上映時間の中に創造的なアイデアと野心を詰め込み、かつ筋の通った作品を完成させた。

受賞コメント

大阪アジアン映画祭にて連日素晴らしい作品を拝見し、自分自身の映画づくりについて自問自答しているタイミングだったものですから、JAPAN CUTS Awardをいただけたことに大変驚き、嬉しく、身が引き締まる思いです。
大阪アジアン映画祭の皆様、審査員の皆様、キャスト、スタッフ、作品にご尽力くださった全ての皆様に心から感謝申し上げます。
風変わりな遠回りをし続ける映画ですが、素敵な瞬間を沢山切り取らせていただきました。これから沢山の方にお届けできるよう精進いたします。
本当にありがとうございます。
監督 大河原恵

芳泉短編賞

洗浄
WAShhh

第20回大阪アジアン映画祭 Osaka Asian Film Festival 2025

授賞理由

まるでリアルタイムで起きている出来事のように、限られた空間と時間の中で観客を巧みに没入させ、少女たちの状況の追体験を可能にする。モノクロームの画がセンセーショナリズムに陥らない緊迫感を作品にもたらす。リアリズムとシンボリズムの両方を兼ね備え、制度の不条理を痛烈に批判し、タブーに挑んでいる。

受賞コメント

『洗浄』を上映してくださり、私たち制作チームの仕事を評価してくださってありがとうございます。これは本当に特別なことだと思います。日本映画、特に小津安二郎監督と是枝裕和監督は、人生の穏やかな瞬間に美を見出すことを教えてくれました。私が映画制作を始めたばかりの頃、映画に夢中にさせてくれました。映画祭で日本の観客の皆さんと交わした会話は示唆に富んでいました。皆さんの映画への愛が、私がなぜこの仕事をしているのかを思い出させてくれました。この賞は単なる評価ではなく、いつまでも人に優しくいること、人々の物語を人々に伝え続けることを常に思い出させてくれるきっかけとなるでしょう。この贈り物に深く感謝し、私の胸に刻みたいと思います。
監督 ミッキー・ライ


スペシャル・メンション

第20回大阪アジアン映画祭 Osaka Asian Film Festival 2025

授賞理由

元気が湧いてくる作品(アダム・ウォン)

編集、音響デザイン、テンポ ー すべてにおいて類のない作品。何が何だか分からないのに、完全に筋が通っている。(ジョン・スー)

まるでサイレント映画のようなアナーキーさを湛えている(木下千花)

受賞コメント

この度はこのような賞をいただき、大変光栄に存じます。
私は小学校から高校まで9年間吹奏楽部に所属しておりましたが、その9年が結実し報われたと感じております。
遠く長野の地で猛暑と豪雨の中、撮影に参加してくれたスタッフ一同、そして楽器経験0から練習し、舞台に臨んでくれた演者5人には感謝しかありません。
今回の受賞を励みに、今後とも映画制作に携わっていきたいと思います。
ちなみに、クランクイン3日前に借り物のトロンボーンをへし曲げるという大事件がありました。撮影から1年半です。そろそろ修理しないとマズいですね。
監督 古谷大地

観客賞

蔵のある街
The Tales of Kurashiki

第20回大阪アジアン映画祭 Osaka Asian Film Festival 2025

受賞コメント

観客賞、心から嬉しいです!
『蔵のある街』は、人と人のつながりを分断したコロナ禍に上げられた花火を元に生まれた物語で、映画を通して人と人、地域と地域をつなげることを目指しています。
 観客賞をいただき、大阪アジアン映画祭に参加された皆さまとつながれたことを確信しました。
 同時にこの賞は、スタッフ・キャストのみんなにいただいた、とびきり素敵なご褒美だったと思います。大きな励みになりました。本当にありがとうございました。
監督 平松恵美子